前編である「プレミアソフトを買うことを批判する人たちに対する違和感」の続きを”ファンタシースター 千年紀の終りに”風のタイトルで。end of the millenniumとend of the premiumをかけているとかどうでもいいと思うので本題に入る。
前編ではプレミアソフトを買う人に対して否定的なことを言うことに対する違和感について書いた。ゲーマーが遊びたいという気持ちで売買した結果としての高額取引自体に何か問題があるとは思えないのだが、インターネットの普及とオークションサイトやフリマアプリ経由での個人取引が増えた結果として、せどりが広範囲にしやすくなったことがさらなるプレミア化を推し進め、その結果ゆがみが生じたようだ。
プレミアソフトは特に注目されるため、ゲームを遊びたい人だけでなく”せどらー”にも頻繁に売買され、過度のプレミアがつくこととなる。ここまではまだ経済原則にのっているので、個人的な感情を置いとけば特に問題とは思わないのだが、過度にプレミアムがついた結果、プレミアソフトの海賊版がオークションやフリマアプリに出品されるようになってしまったのである。
これは、いきすぎたプレミアムが組織ぐるみの海賊版販売を生みだしたとも言えるだろう。ヤフオクのメガドライブソフトなどは本当に酷い状況だ。以前は海賊版は変な日本語の説明文やハードカバーでないパッケージ、貧相なラベルなどで一目で分かるものだったのが、最近は海賊版の見た目が上がっており、説明文も日本語としてはおかしくなくなり、ヤフオクの取引評価もよかったりで、本物を持っていない人には見分けることが困難になりつつあるのだ。また、せどらーが海賊版を落札した上で、転売しようとしているケースも見かけるので一種のロンダリングが行われているようなものである。
現在はたいてい見分けるポイントがあるのでまだいいが、もう少しすると物が届くまで分からないレベルというか、一部の人以外には物が届いてもわからないレベルのものが増えることが予想される。3Dプリンタの普及もそれを後押しするだろう。現在でも、ファミコンソフトでは「新品、超レア」を謳いつつ、箱や説明書が某国の工場で作成された(と推察される)極めて精巧な海賊版もある。実際、既にカートリッジを開けて基板を見ないと判別できないケースもあるようだ。
オークションやフリマアプリを利用しなければ安心かというとそうでもなく、買取・販売担当の店員の専門知識が乏しい店だと海賊版を無自覚に取り扱っている可能性がある。実際そのようなケースも既にあるようだ。つまり、既に”汚染”は身近に迫っているのである。これを完全に避けるには「買わないこと」に尽きる。つまり、現在手持ちでないレトロゲームを遊ぶには実機用のソフトではなく、バーチャルコンソールなどの復刻版を買うのである。復刻版が出ていないソフトではそうもいかない欠点があるし、私のような実機派の人からすると実につまらない対処法でもある。
現時点での現実解は、真贋を鑑定できる人に見分けてもらうことが一番で、二番は信頼できるショップで買うことだろうか。購入時に見分けられなくても、購入後に知り合いに真贋を判定してもらい、海賊版なら返品するのも手であるが、購入後にすり替えたと店側に主張されてトラブルになるリスクがあるだろう。
ここについて、ヤフオクはたいへん弱い。ヤフオクは基本的に出品者と落札者同士で問題を解決しろという方針で、事実上海賊版販売業者を野放しにしているからだ。もちろん、警察や消費生活センターに訴えることで対処することもできるが、かなりの時間と労力が必要となるだろう。少額のものに対してそこまでする気が起きない場合、ヤフオクではせいぜいマイナス評価を付けるくらいしかないが、マイナス評価返しの報復が怖くて付けてない人も多いことが予測される。そしてそこにつけこむ詐欺集団がいるのだから購買者側はたまったものではない。
話を戻して、前記した「いきすぎたプレミアムが組織ぐるみの海賊版販売を生みだしたとも言える」というのが的確だったとしても、自分は「プレミアがついているから」という理由でゲームを買う人たちを批判する気にはならない。前編でも書いたが、個人に相場全体のことを考えて「どうしても遊びたい」という気持ちを抑制しろというのはおかしな話に思えるし、実際に統制できるものでもないからだ。しょせんは”たかがゲームを買うかどうかの話”でしかなく、人様に直接的な迷惑をかけない限りは好きにすればよいのである。コピー品と知りつつ売買するのは論外だが。
今後のことを考えると冗談で「レトロゲーム鑑定士」が商売になるって言っているくらいだが、しばらくはこの状況が改善されることはないだろう。唯一の光はACCS経由でゲームソフトの海賊版販売者に逮捕者が出たことくらいだろうか。海賊版を見つけたら、面倒でもメーカーとACCS 不正コピー情報通報ページから通報した方がいいということで、この話題を締めさせてもらう。通報件数の多寡は実際に動く・動かないに確実に影響を与えるので「誰かが通報しているだろう」で終わらせるよりも行動することが望ましいだろう。Web上でプレミアソフトの購入者をあげつらうよりはよほど建設的である。
[関連リンク]
特許庁:模倣品・海賊版撲滅キャンペーン
経済産業省:海賊版 -相談事例1
ゲームの海賊版については、具体的に危険な出品者IDも含めて掲示板やTwitterで情報交換されているので、ヤフオクを利用する際は「ファミコン メガドラ ヤフオク 海賊版」などでWeb検索すると参考になるかもしれない。