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ゲーム四方山話

ゲームの私的複製とエミュレーターについて

エミュレーターという「ソフトウェア(※)」と、違法ROMを使用した違法エミュレーションという「行為」とを混同している人が多いというのは以前からWeb見てて思っていた。両方とも「エミュ」って略されるのが元凶なのかもと思っている。
※ ハードウェアのこともある

BIOSのパクリやGPLなどのOSSライセンスの違反をしてなければエミュレーター自体に違法性はないし、法律で認められた範囲での私的複製も正当な権利だけど、「マジコン」という言葉に過剰反応する人がいるのはレトロフリークの発売前後のWebでのやりとりを見ると理解できると思う。これは以前から予想していたことでもあり、当時は魔女狩りに巻き込まれたくないので静観していた。そして、レトロフリークが発売されて今月末で1年になるのだが、そういう思い込みからくる不毛なやり取りは、少なくとも自分の周りでは見かけなくなった。「エミュレーター」と「違法エミュレーション」の区別、および私的複製に対する正しい認識がある程度は広まったと推測している。


エミュレーターについては基本的に問題ないことは明らかなので上記で終わりにして、以下はソフトウェアの私的複製についての話を書く。

プログラムの私的複製は著作権法第47条の3で規定されているように、複製元の著作物を売却・譲渡した場合は複製物を処分しなければならないのだが、そこに甘い人はたまにWebで見かける。そこはきちんと自制すべきであろう。時々レンタルCDと比較する人がいるのだが、借りてきたCDをリッピングしても私的複製として合法なくらい緩い音楽のケースとゲームは異なることに注意したい。

個人的には、法律で認められた範囲内での私的複製については胸張って行えばよいと思っている。(コピーガードのない)自己所有の著作物を私的複製して私的利用するだけなら、テープやフロッピーの時代には破損対策で多くの人が普通にやっていたことで、エンドユーザーの正当な権利なのだ。各種ダンプツールやレトロフリークの使用も同様である。

いわゆるレトロゲームの媒体は寿命が近づいているであろうものが多く、バックアップは早めにした方がよいだろう。手持ちだとSG-1000/3000用ソフトのコンゴ・ボンゴは4年前の時点で正しく動かなくなっているし、CD媒体も20年以上前の音楽CDは物理的に穴があきはじめていると聞く以上、CD-ROMメディアのゲームも同様なのだ。正しくゲームができるうちにバックアップを取らないとバックアップの意味は無く、早めに取っておくに越したことはない。自分は実機派なのでPCでのエミュレーターに現時点ではほとんど興味はないが、バックアップを取っておけばカートリッジが破損してもEverDriveのような機器でカバーできるし、CD-ROMもサターンならRheaやPhoebeがある。それらが壊れてから互換機やエミュレーターに頼るのでも遅くはないだろう。

ただ、逆に言うと法律で私的複製と認められない複製というのもある。コピーガードがかかっているソフトの複製がそれにあたる。DS/3DSのいわゆるマジコン類がそれに該当するし、DVDもコピーガードのついているもののリッピングは国内では違法であるので、注意する必要がある。ざっくりとだが、概ねサターン世代以前のCD-ROM、ROMカートリッジは問題ないものがほとんどだと認識していいだろう。少なくともレトロフリークにインストールできるソフトは問題ないとサイバーガジェットのお抱え弁護士は判断しているだろうし。

吸い出したROMイメージを他人に譲渡または販売するのは当たり前だが、著作権法に違反する。当然、不特定多数がアクセスできるサーバー上にアップロードするのも同様だ。そしてROMを吸い出すツールに批判的な人は、著作権法に対する違法行為を助長していると言うのだが、違法行為を行う一部の人のために正しく使っている人の権利を奪うのは個人的にナンセンスに思う。著作権法に対する違法行為に使える道具ということならPCやスマートフォンの方がよほど強い力を持っているのだし、包丁で人を殺すことができても道具に罪はなく、使用者の問題でしかないのだ。便利な道具を正しく使い、10年後、20年後に備えたい。

[参考Webページ]
著作権法
デジタル・ネットワーク社会と著作権 (特にQ5, Q6)
レトロゲーム互換機は合法・違法? ゲームエミュレータを改めて考える 第1回
MAME、悲運のBleem!……エミュレータと著作権 (連載:ゲームエミュレータを改めて考える 第二回)
VirtualConsoleやゲームアーカイブスに見る現代エミュレータのあり方(エミュレータ連載・最終回)
RetroN5事件に見るエミュレータとオープンソースの関係(多根清史のゲーム空中殺法)

余談だが、映画や音楽のように、20年、30年前のものも名盤として安価に楽しめる仕組みをもっとメーカーが提供してくれるのが本来はいいんだろうと思う。ゲームの場合、映像や音楽よりも再現性の問題がシビアなのはわかるが、現状もの足りない。ついでに言うなら法制も含めてクリエイターに正当な対価が支払われるための仕組みが出来ていないのがアレって20年以上前から思っているが、法制も多くの人の意識もなかなか変わらない。多くの人の意識ってものは5年や10年じゃ変わらないし、まだまだこれからなのかもしれない。

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「ゲームの私的複製とエミュレーターについて」への2件の返信

こちらでは初めまして♪

いやー、この話題。
ツイッター見てると、この辺のルールを理解できてない方が多いですよねー。
平気で「バックアップだけ持っててソフトは売った」と言ってたり。
オイオイ、おめーそりゃ完全なクロだろう、とツッコミたくなりますが
自分に飛び火されても嫌なので静観してます(^^;

リンクしていただいてありがとうございます。
こちらもリンクさせていただきました。相互リンクですね。(死語)
これからも記事拝見させていただきますー。ではでは。

こちらでは初めまして。KABUさんようこそ。

この手の話題は正しく理解していないひと同士で、まるで宗教戦争のようになりがちなので、巻き込まれたくない気持ちからふだんは静観してますZzz…。

自分のTLまわりだと正しく理解している人が多いようで平和でなによりです。レトロフリークが発売されてもうすぐ1年ですけど、以前より正しい知識を持っている人は増えている感じがしますね。

メガドラより前の機種は30年選手がごろごろしてますし、早めに備えておきたいものですね。

そんなわけで、コンゴトモ ヨロシク。

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