いちきゅーきゅーぺけ セガ回を読んで(ネタバレ有)

ヤングアニマル嵐で連載されている「いちきゅーきゅーぺけ」(甘詰留太先生著)の2015年No.11とNo.12がセガ回だというのがTwitterで話題になっていたので、読んでみた。私は電子書籍化されている雑誌は電子書籍で買う派なので2週間遅れで。

[前編(No.11掲載(114ページから)、第16話)]

この漫画は「ひねマン」という漫画サークルの活動を描く物語のようだ。サークルノートに女性キャラのイラストを書いた入団希望者「宮田」を勧誘しようとひねマンのメンバーがゲーセンに行くというように話が進んでいく。

1994年当時のゲーセンの情景やプレイ風景がよく描かれている。ゲーセンのコミュニケーションノートにイラストというのも自分が当時通っていたゲーセンでよく見かけた光景。自分の場合、そこから生まれた縁で未だに交流のある友人がいたりするし、当時ストIIやバーチャの対戦にはまっていたしでいっきに没入感。セガ人である宮田くんの『たぶん…他の人とは そんなに趣味合わないと思うから…』が刺さる。

ラス前、ひねマンメンバーが無邪気に質問をする。

セガって何?

これに対し、宮田くんは愕然とし、よろけてからこう返す。

いいだろう!! 語って聞かせよう セガとは何かをッ!!! ただしっ長くなるぜ

続きを読まずにいられない引きだ。ひねマン女子の『うわー めんどくせェことになりそう』という心の声もいい。

[後編(No.12掲載(242ページから)、第17話)]

始まる宮田くんの”セガと僕”語り。まずは、スペースハリアーのムービング筐体の体験。セガ人によく聞く当時スペースハリアー ムービング筐体に触れた衝撃がこうやってベテランプロの漫画家に描かれていると感慨がある。なお、自分の田舎にもスペースハリアーは入らず、後に遊んだときもシットダウン筐体だった。去年ウェアハウス川崎で初めてムービング筐体で遊んだときは本当に衝撃だった。某コミュニティで私が「スペハリ観が変わるくらいに衝撃を受けました」と書いたら、セガ竹崎さんが「ムービング未経験だと凄くイメージに乖離があるんだろうなぁ…と、改めて思いました」と返してくれたくらいで、当時体感していたらまた別のゲーム人生があったかもしれないと思ったものだ。

そしてスペハリを家で遊ぶためのマークIII。アーケード版から多少見劣りしても「僕のスペハリ」であることに価値があるという感覚がいいね。そして目覚めるセガハードの布教使命、でも周りはファミコンに熱中……。宮田くんの以下の嘆きが刺さる。

僕にとってゲームって みんなと遊ぶ道具っていうより 独りに浸るモノになっていったんだ

自分の場合ゲーム歴ダイジェストに書いたようにファミコンは「みんなと遊ぶための道具」だったけど、セガ派だった友人はこんな風に感じていたのかもって思ったら泣けた。でも自分はその友人と本体ごとSC-3000やマークIIIを一時的に交換し合ったりしてたし、セガハードに対する偏見は持ってなかったなぁ。そして、自分の場合メガドラはそれこそ「みんなと遊ぶ道具」でもあった。特にタントアール、イチダントアール、幽遊白書魔強統一戦、ガントレットを4人で遊びまくった体験は宝物になっている。

そして宮田くんはメガドライブについて熱く語る。ファミコンユーザーの友人達がセガのゲームを好きになってくれる転機になることに期待して。でもそれはただ一つの「発表」の前に頓挫する。

今の子には分からないかもしれないが、当時普及していた8bitの家庭用ゲーム機もパソコンも、アーケードゲームに比べるとグラフィックもサウンドも処理速度も全てが大きく劣っていて、16bit機に対する憧れが凄くあった。文字通り「時代が求めた16bit、メガドライブ」なのである。ファミコンよりも圧倒的に性能が高いメガドライブで、今度こそ友人達を振り向かせることができると意気込んだ宮田くんは、「メガドライブの発売に2年後のスーファミの発売発表をぶつけてきた」ことに憤慨する。これは実際の発売は2年後だったにも関わらず、メガドラ発売直後の時点では約8箇月後に出すと発表していたのもある。今だとちょっとゲーム好きな人なら複数メーカーのゲーム機を持っていて当たり前だが、当時はVHS vs. ベータのビデオ規格戦争の煽りもあってか、「本流」に拘る人が多く、本流の次世代機がすぐ次に控えているなら買い控えるという心理が働くのを狙った実にしたたかで狡猾な戦略だったのだ。

宮田くんはメガドラ愛を語った後、悲しそうに言う。

フツーの人はゲームにすごいスペックや先駆性・独創性 尖った部分は求めてないんだ でも…僕は違うみたい きっとどこかフツーじゃないんだ

グサグサ。当時ゲームショップでバイトしていて、自分もこれは感じていた。そして、スーファミに比べて全然売れてないのにこんなに面白くて自分に合うゲームを出し続けてくれていることに感謝していた。海外では売れていることは伝え聞いていたが、それでもよく続けられるものだとも思っていた。バイトくんなりにビジネスモデルの破綻を感じていた。余談だが、これは新品ソフト1本9,000円オーバーがふつうのSFCについても同様。中古でくるくる回り続けてメーカー側に利益がいかないのはおかしいと思っていた。

たとえ独りであってもセガハードで出るゲームが好きだという宮田くんに対し、ひねマン女子は誰かと共有したい気持ちがなければサークルを訪ね歩いたりはしないだろうと問い詰める。そこで宮田くんはサターンについての希望を語る。

出るんだッ!! サターンって名前のすげェヤツッ ポリゴンが扱えて あの「バーチャファイター」が遊べる未来感ハンパないのッ こっ今度こそ天下を取れるハードかもしれないんだ

この頃のサターンとプレイステーションの未来感は本当に凄かった。自分の場合天下を取るかどうかには余り興味がなかったが、閉塞感のある状態を崩してくれるんじゃないかという期待感があった。バイトしているときに感じていたのは、多くの一般ユーザーはメガドライブに対してジーフィー(機会)を与えてすらいないということだった。バーチャファイターのブームもあったし、サターンには今までのマイナスイメージを吹き飛ばしてくれる可能性を感じていた。

宮田くんの話を聞いたひねマンメンバーは別のゲーセンに行き、スペースハリアーを遊び、逆に宮田くんはひねマンメンバーと別の趣味を共有し、後日談も入り話は終わる。

1994年当時のゲーセンや家庭用ゲームの情景が自分の体験と重なってたいへん楽しめた。興味を持った人は雑誌のバックナンバーは探しにくいので、電子書籍をお勧め。単行本待ちもあり。

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