レトロ・クラシックゲーミングに向いている低遅延なアップスキャンコンバーター “RetroTINK-5X Pro” が2021年5月1日(PST)にリリースされたのが5月12日(JST)に届いていて、この半月はこれを試すことに注力していた。
どんな製品であるかなどの情報は本サイトの “RetroTINK-5Xについて” にまとめてあるし、今後もそのページをメインにして更新していくつもりではあるが、ちょっとした補足事項の類いやメモ類はこちらに残していく。
どんな製品なのかは上記ページを読んで欲しい、だけだとあれなので、届いた日の自分のマイニューギアTweetをリンクするとこんな感じ。
というか、届いてから以下のような簡単なテストをスレッドにぶらさげているので参考になると思う。
・MD版240p Test Suite(Ver.1.22)を使った1080p(Fill), 1080p(Over), 1080p(Under)の比較
→ MDは1080p(Fill), 1080p(Over)なら完全なアスペクト比になった。1080p(Under)はわずかだが横長になった
・MD版240p Test Suiteを使ったFrame Lockモードでの解像度切り替えテスト(動画)
→完全に信号が乱れないわけではないが、XRGB-mini FRAMEMEISTERやOSSC Ver.1.6よりはっきり強かった
2019年にXRGB-mini FRAMEMEISTERの生産が終了する前の時点でOSSC Ver.1.6やRetroTINK-2Xのようなコンバータ単体のラグは1msを切る超低遅延コンバーターが出ており自分も愛用してきたのだが、いずれも特化型でバランスが悪い面もあった。RT2Xは超低遅延かつシンプルで使いやすいが、480p出力であるためPCモニタならともかく4KTVだと絵的にイケてなかったしアスペクト比の問題に単体で対処できなかった。OSSCははまれば超低ラグかつプログレッシブは抜群に綺麗だが、そこまでもっていくのに映像方式の基礎知識や問題がおきたときの解決力というか機器を買い足すガッツが必要だった。だが、今回のRT5X Proは使いやすさの点が優秀かつ、とてもバランスがとれていて、やっと一般の人にも勧められるものが出たって感じに受け止めている。”フレームマイスターの代用品”ではなく、 “FHD世代のコンバーターの新たなスタンダード” と言われているだけのことはある完成度だと自分は評価しており、今後どんどん活用していきたい。
いつものテスト動画も上げていて、現時点ではまたピクセルパーフェクトなシャープな映像にできてない機種もあるが、作者のMike Chi氏はとても優秀かつ熱心にスピードを持って製品開発をするので遠くない未来に対応されると思っている。
解像度切り替えの強さは直接的に他のコンバーターと比較している。
なお、ファームウェアは2021-05-26に工場出荷時のVer.1.01からVer.1.2に上がっているが、家庭用で映像のシャープさはよりよくなった機種が多いが、同期の安定感はVer.1.01より少し落ちた感がある。特にアケ基板では顕著で、Ver.1.01ではFrame Lockモードで動作していたものがTriple Bufferでも上部が乱れるものがちらほらあった。前記したようにまだ出たばかりなので、この辺はFwのバージョンごとに変わっていくと思うが、この製品は家庭用ゲーム機用途に作られているのが明確なので、MVS以外のアケ基板の対応はあまり期待しない方がいいと思っている。
ただし、Ver.1.2で確認したアトミスウェイブの映像はとても魅力的で、アトミスオーナーはこれのためだけにRT5X買っても損はないと思うくらいにいい感じだったりするのが良い意味で話を複雑化させている気がする。アトミスがイケているということは、あっちもおそらくそうなんだけど、自分で試していないのでこれ以上は書かないでおく。
本サイトに書くようなことでないこともせっかくなので。
[乗り換えガイド]
基本家庭用ゲーム機用途の人むけ。もちろんアケ基板用途でも使えるのだが、表示位置が合わなかったときに細かな調整はできないし、H.Samplingの最適化は基本できないと割り切る必要がある。明るさ調整も外部でする必要がある。表示位置については新しめの基板なら、基板側で対処できるものもあるし、位置を調整する外部の装置もあるのでそれを利用する手もある。レトロホビーPC用途は知らないというか触れるつもりがない。
まず、「OSSC Ver.1.6で240p Line 4x/5x環境を既に整えていて満足している And 480iは無視してよい」という人はRT5Xに乗り換える必要性は薄いだろう。というか乗り換えより併用がいいと思う。
RTA系とかで低ラグにこだわって現在RetroTINK-2Xシリーズを使っているって人が乗り換える価値があるかどうかは、ラグテスターを使用してのディスプレイ表示遅延検証をきちんと理解した上で、ゲーミングモニタでの最大2msの差と他のいろんな要素とを秤にかけて判断すればよい。
いまフレームマイスターを使ってる人は実質無料チケットを持っているようなものなので、一番乗り換えに向いているだろう。過去何度となく「フレームマイスターの遅延は気にならない」と言っていた人たちですらOSSCやRetroTINK(RAD2X)のようなモダンなコンバーターに乗り換えたときに「はっきり快適になった」とか「実機でのプレイがより楽しくなった」とか言いがちなのを見てきているだけに、お金をかけずに乗り換えられるチャンスを逃さない方がいいんじゃないかとは思うが、けっきょくは好きにしてくれとしかいいようがない。ラグにしても解像度切り替えにしても画面の鮮明さにしても、実機でのゲームプレイをより楽しくすることに価値をどれだけ見いだせるかというだけの話でしかないのだ。
ただし、前記したようにアケ基板用途に限定するとFirmware Ver.1.2時点のRT5X-Proよりフレームマイスター(Fw Ver.2.04)の方が対応基板数は多いので、他に機器を持っていない人は熟慮する必要があるだろう。基板用途についてはOSSCにそもそも乗り換えていた方がよいというか、ゲームプレイ用途にフレームマイスターを使うのはもうやめておいた方がいいんじゃという話は今回はおいておく。キャプチャだけならともかくとして。
OSSC Proも控えているけど、アケ基板用途がない人はRT5Xの設定の簡易さ、運用のしやすさなどから総合的に見たときにこちらを第一に考えた方がいいと思っている。RT5X-ProとOSSC Proでは価格差もそれなりにありそうなのもある。あくまで予想ではあるし、けっきょくはここも好きにしてくれという話。
また、ケーブルタイプが好きな人は5X-Directという選択肢も将来的には控えているので待つのもありにはありだがいま遅延の大きい製品を使ってる人はなるはやで乗り換えた方がいいとも思う。
RetroTINK-5X-Pro は日本ローカルのアナログRGB21ピン(JP21)ではなく、同コネクタ別配線のSCARTコネクタがついているのには注意して欲しい。JP21→SCART変換ケーブルを用意するか、ハードごとのSCARTケーブルを用意するかだけの話なのでここは特に大きな問題ではないのだが、ネットを見ていると必要以上にここを大きな問題だと捉える人がいるので念のため書いておく。日本仕様のRGB21ピンセレクタを使ってるなら変換ケーブルを1つ用意すればいいだけの話で、軽い注意事項程度のこと。
2021-06-06追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.24がリリースされた。
公式にアナウンスされている内容は以下。
- ローパスフィルタの設定がOff/Onから、Off/Light/Medium/Strong の4段階になった
- 1440p出力モードでDTV858が正しく機能するようになった
- スキャンラインがOff/50%/90%/100%から、Off/25%/50%/80%/100%に変わった
- 480iのときに480pのスキャンラインを使えるようになった
アケ基板の対応はまたちょっと変わっていた。全部を調べる気はないが、ケイブものをゲーセンでGV-HDRECで録るなんて用途の人には、Ver.1.2よりはよくなってると伝えたい。ただ、この用途に限定するとVer.1.01の方が対応度が高かったことも付記しておく。手持ちのケイブものはFirmware Ver.1.01の時点では全部Frame Lockで安定動作していたのだ。
Ver.1.24ではエスプガルーダはFrame Lockで安定していたが、同じCAVE IGS PGM Hardwareの怒首領蜂大往生ブラックレーベルはFrame LockでもTriple Bufferでも同期が定期的に乱れた。CV1000-Bの虫姫さまふたり Ver.1.5はTriple Bufferなら大丈夫だった。
2021-06-16追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.28がリリースされた。
基本360p対応なのでパスしてもいいのかもしれないが、とりあえず上げてみた。
2021-06-19追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.29がリリースされた。
とりあえず上げてみた。
2021-07-21追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.55がリリースされた。
とりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。
なぜかOSDのフォントが変わっていた。
あと、2021-07-24 AM9:00(PDT) (=2021-07-24 16:00 GMT)にRetroTINK-5X Proの二次出荷受付が開始される模様。
後日マスターシステムも確認したが、PC環境(Magewell Pro Capture HDMI 4K Plus LT + IO DATA LCD-RDT242XPB/ Pixio PX329)だとFrame Lockで問題なく映る用になったが、TV環境(AVerMedia ER330 + REGZA BM620X)だとTriple Bufferでないと映らなかった。
2021-07-25追記
RT5X-Pro Fw.1.55でのアーケード基板の対応度を通電を兼ねてしてみた。
Ver.1.01 : Frame Lock – 手持ち5割弱対応, Triple Buffer – 手持ち75%で対応
Ver.1.2 : Frame Lockで対応基板現象
Ver.1.55: Frame Lock – 手持ち4割弱対応, Triple Bufferはキャプチャは6割対応、PCモニタだとなぜか乱れた。これはキャプチャボードを以前使っていたXCapture-1に戻したら解消したので、先月から使い始めた “Magewell Pro Capture HDMI 4K Plus LT” のPass-thruの問題のようだ。
MV-1FZでのMVSは、Fw.Ver.1.55ではTriple Bufferでも乱れなかった。ただ、クリアまでは試していない。
2021-08-09追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.67がリリースされた。今回の主な修正はスキャンラインがOffも含めると11種類も選べるようになったことと、プレステ1の320モードがGen/Satの320モードから独立したことだろう。
とりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。マスターシステムもPC環境モニタでならFrame Lockで映った(TVでは確かめていない)。
今回試した内容は以下Tweetのスレッドで。
あとこのタイミングで以前OSSC Ver.1.6でやったように、手持ちアーケード基板で一面番長した動画をあげておいた。
ぶたさんはおそらく今後も映らないと思うが、MVSは基板バージョンによって映る、映らないが変わるようなので、今後手持ちのバージョン(MV-1FZ)も対応してくれることにちょっとだけ期待している。まぁOSSC Ver.1.6あるので困らないんだけど。
2021-08-27追記
RetroTINK公式で推奨されているMV-1Cを試してみたら、RT5X Pro Fw Ver.1.67でTriple Buffer/Frame Lockともに安定して遊べた。ここまで違うのに驚いた。
せっかくなのでMV-1Cでの動画も録ってみた。
2021-09-05追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.74がリリースされた。今回の主な修正はSmoothing Filterが追加されたこと。あとはアパーチャグリルスキャンラインが修正されたことと、SNES(SFC)などで不安定になる可能性があった項目を戻したことなどで詳細はchangelogを見ればよい。
とりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。マスターシステムもPC環境モニタでならFrame Lockで映った(TVでは確かめていない)が、LPFをStrongにする必要があった。マスターシステムはLPF: Mediumだと画面上部がCurlした。
今回試した内容は以下Tweetのスレッドで。
アーケード基板についても手持ちアトミスウェイブ以外は全部試したが、Frame Lock – 手持ち2/3対応, Triple Bufferは8割強対応と過去一番対応率が高かった。
Fw.Ver.1.67ではTriple Bufferでしか安定していなかったドルアーガの塔やドラゴンバスターも、Ver.1.74ではFrame Lockで安定していた(1面番長の範囲では)。
逆に、サンダーフォースACはTriple BufferでもFrame Lockでもプレイ画面が乱れたため後退中。TFACについてはFw.Ver.1.24が一番安定していたと思う。
MVSはVer.1.67と同様に、MV-1CではFrame Lock/Triple Bufferともに安定で、MV-1FZではともに同期が安定しない結果となった。
2021-09-11追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.77がリリースされた。 今回はマイナーバージョンアップ。LPFがRGB or Component接続時以外のときは “N/A” 表示され変更できなくなった。なお、Ver.1.74までは “SDTV LPF” 表記だったのが “Video LPF” 表記に変わっている。
とりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。マスターシステムもPC環境モニタでならFrame Lockで映った(TVでは確かめていない)が、LPFをStrongにする必要があった。マスターシステムはLPF: Mediumだと画面上部がCurlした。
今回試した内容は以下Tweetのスレッドで。
アーケード基板についても試したが、Firmware Ver.1.74から映る・映らないが変わったタイトルはなかった。ただ、LPF:Strongでなくても映るように戻った基板が多くなったかも(詳細には調べていない)。
2021-09-21追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.84がリリースされた。 今回はPAL対応が中心だが、他にも修正があるので基本上げた方がよいだろう。
自分はいつもどおりにとりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。マスターシステムだとLPFをStrongにする必要があったは変わらず。PAL SMSIIもLPF:Strongならそれなりに安定したがプレイ前に1度だけ暗転したのが、他で出ないかは少しだけ気がかりではある。
今回試した内容は以下Tweetのスレッドで。平日でのリリース初日なので、まだ試したいことがいろいろ残っているが、それはTwitterの方に追加していく。
Firmware Ver.1.84アーケード基板の対応度も通電を兼ねて調べてみた。
Frame Lock – 手持ち6割5分で対応
Triple Buffer – 手持ち8割で対応
2021-10-10追記
RT5X-Pro Firmware Ver.1.98がリリースされた。 今回は盛沢山だが、とりあえず大きなところは480pの対応度のアップ。4:4:4になったのもあって発色がよくなっていると感じた。
自分はいつもどおりにとりあえず上げてみた。メガドラ、サターン、ドリームキャストでFrame Lockで問題なく遊べることを確認した。マスターシステムだとLPFをStrongにする必要があったは変わらず。
今回試した内容はとりあえず以下Tweetのスレッドで。スキャンラインの更新も大きいのでblogで単独記事にしたい気持ちもあるけどとりあえずこれだけ。
2021-10-12追記
RetroTINK-5X Pro Firmware Ver.1.99がリリースされた。今後はこの記事にぶら下げるのはやめて、別記事に起こすことにした。「RetroTINK-5X」タグをクリックすれば、履歴で確認できることだろう。
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